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大雲取越え・小雲取越え


熊野修験・春峰入り(南奥駈・順峯)第一回
     ツアーでは無く、本物の奥駈けです・・・大雲取越え・小雲取越


今回の参加者 57名(行者さん含む)
 この人数を聞いて多いのに驚いたのだけど、数年前に一度160人もの人になり、色々な問題が出て、その翌年は
 行者さん達だけで 奥駈をされたとの事。
 その後再び一般の人も参加出来るようになったらしい
 ※後日談(二度目の奥駈に参加した時に聞いた事なのだけど、この時の奥駈で途中でリタイアした人が十数人いた
   との事)
3月2日(金曜日 雨)
移動

8時過ぎに家を出ても紀伊勝浦に着いたのはPM2時半
紀伊勝浦からバスで約30分で宿に到着の予定だった。
ところが駅の改札を出ると「山口県の※※さんですか?」っと二人の女性が声を掛けてこられた。
驚いたのだけどなんと青岸渡寺のTさん(副住職)の奥様と、随分昔から奥駈に参加してらっしゃる東京のFさん。
解らないと思ったので迎えに来ましたとの事。
               (同じ列車に二人の奥駈に参加される女性も乗ってた)
               (後で聞いたのだけど「私の時は、そうじゃ(迎え)無かったよ」との事なので、参加の葉書
               を出したままで何の連絡もしなかったので、心配されたのかな?っと思う)
宿のチェックインがPM4時なので、それに間に合う列車といえばこの列車だからとの事。
               (本当に驚いた。感謝です)
車に乗せてもらい、まず青岸渡寺へ。

その道中目にしたのは昨年の台風12号の被害場所が復興・復旧がまだされていない風景。
どうやって流れてくるの?っと思う様な巨大な岩が、未だに川を覆い尽くしている。
道路も路肩が崩れている場所も沢山あり、工事中の場所も数えきれない程。
屋根だけの家がポツンと残っていたり・・・。
東北の事は何度となくテレビに流れるので記憶も新しいのだけど、この台風12号はすっかり記憶から抜け落ちていた。
                (ニュースで流れる事も無いので復興・復旧が出来ていると思っていた)
とても痛々しい風景だった。
青岸渡寺にいらっしゃったTさんに御挨拶して宿へ。
今回の奥駈のメンバーが約10人宿泊していた。
夜Tさんが来られ明日の事に関する連絡事項があった。
その時に頂いたメンバー表の下にサポート隊という人達が17人もいらっしゃる。
                (このサポート隊の人達は宗派を超えて集まって下さってるとの事)
AM6時 青岸渡寺前集合 
朝食はAM5時15分〜食べれるとの事。
宿から車で送ってもらえるらしい。その車の出発時間が5時45分
このタイムテーブルだと朝食を食べに下へ降りる時には、出発出来る準備をしてから降りる必要がある。 
3月3日(土曜日 晴天)
南奥駈・春峰入り 第一回

準備万端で首からヘッドライトをぶら下げて、荷物も全部まとめて食事に降りた。
すると「あら・・ヘッドライトは要らないわよ」っと言われ「え?夕方遅くなりますよね?」っと、何も知らない私は聞いた。
その時に「本宮がPM5時に閉まるので、それまでに本宮迄到着するように歩くのよ」っと、ごく当たり前のように言われた。
「えっ!そうなんですか。じゃぁヘッドライトザックに入れておきます」っと返事したものの・・・内心「うっそぉ〜〜〜」っと絶句。
この行程約30キロを休憩を含めて10時間強で行くなんて・・・。

実は私・・・この行程を14〜15時間位かけて歩くのかと思っていたので、PM7時か8時頃に宿に到着って事になるだろうな?っと思っていた。
朝食を食べる手が、緊張でちょっと震えた。 ^^;

集合時間がAM6時。
   (集合した人達を見ると鉢巻をした人や白装束を着た人・輪袈裟を首から下げている人。中には私のように
   普通の姿の人達もいる)
・青岸渡寺に参拝(ほら貝と手錫杖音と共にお経をあげる)
・熊野那智大社に参拝 ( 同上 )
・歩き出したのがAM6時15分
 先頭は行者さん達・そのすぐ後ろが「初めてさん(私達)」・その後ろから修行をする人達。
 靡(なびき)でその都度「勤行」をあげながら歩くのだけど、その時に立っている時間も休憩に入る。
     (大峯75靡(なびき)と言う行場がある。その靡とは神仏が宿る場所だとされている)
 その時間にプラス5分程の休憩を取りつつあるく。
 一番驚いたのが長い登りの急坂になった時。行者さんが腹の底から大きな声で「ろぉ〜っ〜こぉ〜〜ぉ〜〜ん 
 しょ〜ぉ〜じょ〜ぉ〜〜」っと言うと、皆がその後から「さぁ〜ん〜〜げ〜〜・さんげ〜〜」っとこれまた腹の底から
 声を 出す。(腹の底から出すという事が必要)
             (この掛声には2種類の音階があり、それを交互に言う)

 で、最初はこの「大声を出す事」に驚いたのだけど・・・ふっと気づくと歩き始めで、しかも急な登り坂なのに全くえらく ない(つらくない)。
 歩きつつ「何故こんなにも楽に坂が登れるの?」っと考えた時に水泳教室に行った時の事を思い出した。
 水泳の先生が「思い切って息を吐ききって下さい。すると息を吸おうと考えなくっても喉を緩めたら一気に空気が
 入ってきます。とにかく息を吐ききる事が大事です」っと言われていた。

 この腹から声を出す事で・・・息を吐き切る・・・喉を緩めると空気が一気に肺に入ってくる・・・呼吸が深まるので、
 充分に酸素が行き渡り急坂が苦も無く登れるのだと思った。

 そう言えば軍隊の訓練で走っている時に、上官と兵隊が大声を出し掛け合っている。
 これも息が深くなるので疲れが違うんじゃないかな?っと思う。
       (意味も無く声を出している訳では無い事が初めて解った)
       (とは言え、普通の山でこの掛け声をかけつつ登っていたら皆が驚くだろうなぁ〜っと思う。)

・・・当たり前の事なのだけど・・・
  熊野の観光ポスターには苔むした石畳・大きな木・・・これを見て「美しいなぁ〜」っと思う。
  しかしこういう道を「歩く」と考えた時・・・滑るだろうなぁ〜・・・という事・・・当たり前の事なのだけど・・・・

で、この苔むした石畳風の坂や・・・苔むした階段を含む坂を延々4`にわたって下る・・・という場所がある。
「下り」というだけでも「膝にきそう」なのに、覚悟して行ったとは言え実際に行って見ると苔むした石に枯れた杉葉が降り積もっていて、気を抜くと滑る・・・滑る。
怖がりの私は滑らぬように・・・と膝に力を込めて歩く
         (幸い一度もこけず。安ど)

円座石他、要所要所で勤行を上げつつ昼食予定地の小口に到着
        (12時20分到着・・・予定より20分程遅かったらしい。出発時間はPM1時)
サポート隊の人達に弁当とお茶を頂き、すきっ腹に弁当を詰め込む。
        (弁当は自分で持って歩くと思っていたのだけど、そうではなかった。お茶ももらえるという事なので、
        実は、持って歩く水を1gにした。それだけで相当楽だった)

・・・大雲取越えを越えたという事で「最大の難関をクリアしたぞっ」と、この時点では思っていた・・・・
何しろ出版されている本等を見ると小雲取越えは楽しくピクニック気分で歩けます・・・と書いてあるんだもの。

場所はどの辺りか解らないのだけどPM3時過ぎに林道に交差した場所に出ると差し入れが待っていた。
それが「甘ぁ〜〜い紅茶」やレモンの輪切り・食べやすく切って二つずつ袋に入ったネーブル・コーヒーやお菓子。
その中の「暖かくって甘ぁ〜〜い紅茶」
ブチ甘いのだけど、それを一口飲んだ時に「あぁぁ〜〜〜美味しいぃ〜♪体に染み渡るぅ〜♪」っと涙出そうになった
      (甘くて暖かい物がこんなに美味しいと感じるって事は、自分で思っているより疲れてたんだろうなぁ)
                         (サポート隊の人達に感謝)

それから約1時間・・・4時って事は終わりが近くなってきたぞ。もうすぐ終わりだぁ・・・っと思っていたら突然のように右ひざ上辺りの筋肉が痛くなった。
登りや平坦は全く問題無く歩けるのだけど、ちょっとした下りでも「痛!!」っと言う感じ。
この頃になって下り坂で酷使した「下りに使う筋肉」が悲鳴を上げてきたようだ。
見栄っ張りの私はそんな「筋肉痛」を思わせる歩きをしたくないので、心の中で「痛!!・くそっ!痛!痛ぁ〜い!・」っと叫びつつ歩く。
      (心の中で・・・です。あくまでも)

しかし痛みには逆らえず、下りにはスピードを思わず落としてしまう。
この時点迄は「初めてさん」の行者さんから2番目という位置をキープしてたのだけど、到着した時は前に10人ばかりの人達に抜かれてた。 ^^;
     (膝を痛めたのでは無いのに、足が痛くって歩く事に苦労するなんて・・・生まれて初めてこんな事になった。)

で・・・とどめが・・・那智本宮大社に到着してから・・・
行者さんに「両手を腰の位置で構えて、脱帽して歩いて下さい」と言われ見上げた「那智本宮大社に続く長ぁ〜い石段」
絶望的な気分で「登れるけど・・・登れるけど・・・下り・・・どうしよう」っと・・・それ位痛みがあった。^^;
泣き言の言えない私・・・「えぇ〜〜い・・・どうにでもなれ!!」っと・・・何食わぬ顔で石段を上る。
       (登りは何とも無いのよねぇ〜・・・平坦も何ともないんだけど・・・)

那智大社の前で「勤行」を終え・・・皆で記念写真を撮って・・・下る事になった。
助かったのは「解団式」をしたので、写真を撮った後で大社の前で解散になった事だ。

右足を先ず下す、で、そこに左足を置く・・・という歩きでやっと下界へ到着。

その後「Tさん・Tさんの奥様・サポート隊の一部の人達・私達・・」で夕食へ。
       
※恥ずかしくて、そして反省しきり・・・
 本宮からサポート隊の人達の車で紀伊勝浦の宿に連れて帰ってもらう道中に色々な話をした。この時に「サポー
 ト隊の人達」の話を聞いた。
 林道と交差している場所には必ずサポート隊の人がいて、これ以上歩けない人、荷物が多すぎた人、等に対して
 の対応。
 湯茶の接待。
 宿泊する人達を各宿へ送る車を出す。(全員を送って下さる?のでは無い?のだろうけど・・・。)

 で、三回目の玉置山〜深仙・前鬼 1泊2日の事。
 サポート隊の人達が食料他を荷揚げされ、宿泊されて、奥駈全員の食事の用意をして下さるとの事。
 無人小屋なので泊まれる人数が決められているので、この行に参加出来るのはごく限られた人だという事
 沢山の人達に支えられて行われている事を知って「歩く事だけ」を考えている私っての如何なものか?っと
 恥ずかしく、そして反省しきり。

 「奥駈に来た」のでは無く「奥駈に参加させて頂いた」と考えなくっちゃいけないんだと解った。

※歩いていて色々な人達と話して・・・
 ・近くから参加された人達に「被害は?」っと聞くと、全員が「実は・・・」と言われて改めて被害の大きさを知った。
 ・ストレッチをしていたら「足がつったの?それならこれが即効性があって効きますよ」っと薬を下さった男性。
         (ストレッチをしていたんですと言ったのだけど「沢山持ってきましたからあげますよ」っと。)
 ・小柄なリンゴほっぺの女性は「本宮の語り部なんですよ」っと。
 ・紫色で和風の地下足袋を履いた、これまた細ぉ〜い小柄な女性は「古道の語り部をしています」って。
 ・菅笠をかぶった男性も古道の語り部だとの事。
 ・JTBで今度人を連れてきますので・・・と言われる男性・・・この人も有名な語り部さんらしい。
 ・愛知からです・・とか、東京からです・・・とか色々、な場所から来られている
 
 リンゴほっぺの小柄な女性が「車に乗るのに一緒に乗りましょう」っと言って下さり、菅笠の語り部の人に予約して
 下さったり。
 ・・・・暖かい人達に囲まれてすごく嬉しい一日だった・・・
3月4日(日曜日 雨)
移動だけのつもりが観光も・・・
 昨夜の夕食の時に若い行者(たぶん30代前半)のFさんが「明日AM5時から青岸渡寺の朝の勤行があります
 けど、行きますか?ホテル迎えに行きますよ」との事で、同じホテルに宿泊の4人と一緒に4時半に待ち合わせ
 て青岸渡寺に行った。

 朝のお勤めを終え薄暗い那智大社へ・・・巨大樟の木の胎内めぐりをしたり・・・お参りしたり・・・
 その後、那智の滝を見に行った。
 すると「飛龍神社」では丁度神主さんが、朝の祝詞をあげてらっしゃる場面に遭遇♪
 那智の滝に向かって祝詞をあげてらっしゃる姿・・・素晴らしかった。
 料金を払い、那智の滝に一番近い場所迄行った時に行者のFさんが法螺貝を吹きはじめた。
 美しい那智の滝にとても良く似合った音で・・・素晴らしいなぁ〜っと思った。
 「勤行」を始めたFさんにつられて皆も。

 その後ホテル迄送って下さり、皆で朝食を食べた。
 その時にFさんが皆の列車の時間を聞いて「補陀洛山寺は近いですし、まだ時間がありますから行った事が無い
 のだったら補陀洛山寺に行きましょう。
 勿論皆大喜びで補陀洛山寺に行った。

 8時過ぎに到着したのだけど、まだ開いていなかった。
 待つ事4〜5分で補陀洛山寺が開いたのでお参りした。
 皆で「勤行」をしたら、御夫婦らしい二人連れの方も入ってこられた。
 それを見て「初めて来られた方いらっしゃいますか?」っと住職
 私と御夫婦連れが初めてという事が解り、それじゃ「御本尊をお見せしましょう」と言われた♪
 補陀洛山寺の御本尊は「三貌十一面千手眼観音菩薩(重要文化財・・・限りなく国宝に近いとの事)」で、耐火金庫
 の中に納められている。
        (普段はその扉が締めてあり、その前に御本尊の写真が置いてある。)

 一緒に行った人達も本物の御本尊は見た事が無かったらしく「良かったねぇ〜」っと大感激。
 「私もこんな朝早く御本尊のドアを開けた事はありません」と言われてた。
        (ご一緒した人達の「徳」のお蔭だなっと感謝)
 補陀落渡海の船も見たし・・・移動だけのつもりだったのが観光も出来た。
 有難う御座いました。
 若い行者のFさんに「知多半島に足を向けて寝ませんから・・・」っと (^^)

 駅迄乗せていただき、皆さんとお別れした。


※思う事
 色々な場所に行き、知らない人達に出会い、知らない事を知っていく楽しみ。
 苦しい事を経験したからこそ味わえる色々な事。

 御一緒して下さった方々に感謝。

※そうそう・・・天気の神様に感謝。
   (だって晴れててもあれだけ大変だった苔むした石畳や階段が・・・雨が降ってたら全行程歩けなかったような
   気がする。)

 家族に感謝。
 丈夫に産んでくれた亡母に感謝。
 色々な「お陰様」に感謝。

 私を取り囲んでいる様々な事柄に心から「ありがとう♪」