節分

2月2日、節分の行事を行いました。


「節分に豆を撒くのは何故だろうか?。」と、豆を撒くたび疑問に思う。
それは、誰もが一度は抱く疑問に違いない。そこで、冒頭という事もあり調べて
みた。『節分』・・・(季節のわかれめ、の意)立春・立夏・立秋・立冬の前日の
称。特に、立春の前日の称。古くは立春を一年の始まりとしたため、大晦日
としての性格をもつ。鬼打ち豆を撒いて鬼を追い払うなで、邪心や災厄を防ぐ
ための行事が多い。(講談社 日本語大事典参照)
成程納得。豆撒きにもそんな意味があったとは・・。と、前フリも終わりました
ので、本題に入ります。

2001年2月2日
外は生憎の雨。雪に変わりそうな気配が濃厚な天気。嫌な感覚に包まれていた。
それは、行事への不安ではなく、家に帰る事が出来ないかも、の不安だったの
だが・・・。
10時30分
患者さんも出揃い、いよいよ開始。始めの言葉も終わり、次は歌。歌は『豆まき』。
なんとも馴染みの無い歌で、御存知無い方もかなりいらっしゃるでしょう。私も
その一人。何人かに歌って貰っても「なんじゃこりゃ」の世界だった。歌い手は
音痴と呼ばれているが、この歌に関しては音程がとれていたらしい。というのも
私はこの歌を知らないから・・・。
彼は、歌う前に不意に姿を消していた。緊張していたのだろうか。歌も終わり、
いよいよゲーム。題は、『赤鬼・青鬼ブッ倒し』。空き缶に、紙で作った赤鬼
青鬼が貼り付けてある。それを二列縦隊に並んだ患者さんの間にランダムに置く
鬼には得点があり、大きな鬼は50点、中鬼は30点、小鬼は10点。普通は逆なの
だが(大鬼は10点、小鬼は50点でしょう。普通は)気にしない事にした。缶には倒れ
ないよう砂利が入っていたらしい。チームは二つで、一つは『おかめチーム』、
もう一つは『鬼チーム』。行う事は、題名通り缶倒し。極めてシンプルなゲーム
患者さん一人一人にお手玉を三個渡し、『おかめチーム』には赤鬼を、『鬼チー
ム』には青鬼を倒してもらう。私の素朴な疑問コーナー、ナゼ?何故鬼が鬼を倒
すんだ。正に、『鬼の撹乱』。(本当は『鬼の霍乱』で、意味が全然違います。)
疑問コーナー終了。


説明も終わり、ゲームスタート。缶の倒れる音が響き渡る。それは、凄まじい
音。。まるで・・・。オッ!この曲は、今のこと状況通り、まさにジャスト
フィット。「ダイナマイト」。SMAPのヒット曲である。この曲に誘発されている
かの如く、憑かれたような眼差しで患者は缶を倒していく。本気(マジ)だ。
「ピィーッ」終了の笛がなった。得点発表。『おかめチーム』710点。『鬼チー
ム』830点。一回戦は『鬼チーム』の勝利。気を取り直して二回戦。「ピィーッ」
またまた、玉の嵐が吹き荒れる。それは、まるで・・・。オッ!この曲は。
今のこの状況通り。正にジャストバランス。「青いイナズマ」。またSMAPである。
27歳の男が選ぶ ”俺に似合う曲”だそうだ。なんて勘違い・・・。「ピィーッ」
二回戦終了。結果は・・・。『おかめチーム』1060点。『鬼チーム』1450点。
何ともはや・・・。『鬼チーム』のワンサイドゲーム。「鬼は外」どころでは
無い。『鬼』は、更に威力を増して、『福』を追いつめる。と言っても『おかめ』
=『福』では無いのだが・・・。『おかめ』とは、垂れ目でしもぶくれの福々
しい女道化面。または、この面に似た容貌の女性を指すそうだ。チームの命名は
どんな頭から捻り出されたのだろうか。気を取り直して次ぎのゲーム。ゲーム名
は、『豆量り目方でドンピシャ』。このゲームは、豆に見立てたBB弾が入れられ
ている箱から、こちらの指定した分量を取ってもらうという競技で、二チーム
からそれぞれ代表者がくじで二人ほど選ばれる。このくじの抽選番号は最初に
歌った「豆まき」の歌詞カードに書かれてある。我々の細工として、本来ならば
公正なくじであるべき所を、当然というべきか、痴呆の方などは避けて通って
いる。何故かはお分かりと思うが、一にルール理解が厳しい。二に、食べる(飲
み込む)危険性がある。三に自立した患者の興味度が下がる等の理由からだ。
これを読まれた方の中には「こちらが手助けをしてあげれば・・・」とか、「差
別をするな」等、諸々のご指摘があると思う。しかし、ここで考えなければなら
ないのは、限られた時間での行事の進行と、個人攻撃の対象になりがたい患者
さんをセレクトする事だった。特に、普通のレクリエーションとは違い、様々な
患者さんが出てくる行事では、足を引っ張られるのを嫌がる方が多く、憤り等で
興奮が冷めてしまい、雰囲気が壊れてしまう事が多い。そこで考えるのは・・。
『公正でないくじを、公正に見せる努力』


係りの者は、私のこの要求について、色々と考えを巡らしたようだった。結果は
このゲームの担当者によるくじ引き。私の求めた答えとは、大きくかけ離れた
ものであった事は否めない。まあ、彼らなりの答えを実践したのだから満足はし
ているだろう。ゲームが開始された。選ばれた4人に課せられた重量設定は”250g”
弾は3回まですくえ、一回目は重量を見る事が出来る。(BB弾は大きなお菓子缶の
ようなものに入っている。それを、プラスチック容器ですくい、所定の入れ物へ
と移す)二回目・三回目は、自らの感覚を信じて行うしかない。精神に緊張と
集中をもたらす一瞬だ!と思っていた。が、予想とは裏腹に、飄々と無関心を
気取って、弾を入れている。各チーム一人ずつの対抗戦。一勝一敗で並んだ場合
のみ、それぞれの勝者でもう一戦という図式だ。一戦目。『おかめチーム』200g
『鬼チーム』260g。ニアピン賞で『鬼チーム』の勝利。二戦目。『おかめチーム』
230g。『鬼チーム』310g。今度は『おかめチーム』の勝利。そして、ファイナル
ラウンド。設定値は、50gへと変更された。『おかめチーム』120g。『鬼チーム』
70g。このゲームも『鬼チーム』の勝利。節分は鬼達に席巻された。因みにこの
ゲームで流された曲は『運命』。節分を席巻している鬼達の運命やいかに。
「ダーン。ダーン。」何か分からない。凄い音がし始めた。音楽でもない。「ダ
ーン。ダーン。」何かがどこかに当たっている音だ。「オリャー!」太い声が谺
する。見てみると・・・。そこに出たるのは、黒い金棒振り回し、怒り狂った容
貌の全身青の鬼だった。
 


いや、鬼の面と、青いタイツ・青いTシャツを着た職員だった。そちらに眼を
奪われていると・・。「チリン。チリン。」鈴の音?「チリンッ。チリンッ。」
何の音だ。オッ!。こちらに出るは、かわいいハンマー(叩くと「ピコッ」と音
がするもの)を持った、気の弱そうな赤鬼が、か細く高い声を出しながら歩いて
くるではないか。何とも対照的な二人。この二人は、好むと好まざるに拘わらず
師弟関係であり、このような行事では、素晴らしい味を披露してくれる。当然二
人とも男性である。患者さんたちは、配られてくる豆を鬼達へ集中砲火。嵐のよ
うな豆飛沫。とくれば、流れる曲は『嵐』では無かった、『慎吾ママのオハロッ
ク』だ!センスのかけらもない選曲だ。そのせいかもしれない。患者さんの眼光
の鋭さは、何かに憑かれた様な恐ろしさを感じた。否、患者さんの眼ではない、
患者さんは、笑いながら豆を投げている。「ギャッ!」鬼の悲痛な叫び!ハリセ
ンで叩かれている。「ウギャッ!」また、鬼の悲鳴が。凄まじい速球が鬼を襲う
まさか・・・。鬼よりも恐ろしいのは、職員達であった。可哀相な鬼の師弟は、
抗う術もなく、痛さを堪え忍ぶしか道はなかった。「鬼役なんてしなくてよかっ
た。」これは心の籠もった実感である。それは置いといて、豆撒きは、毎年なが
らの好評。大変喜んでもらえた。芸の細かい師弟のおかげもあって・・・。この
後、行事恒例のおやつタイム。豆やマルボーロを振る舞った。約一時間の行事は
和やかに幕を閉じた。